人の話を聞く前に、自分の話を聞いてあげて

『利き』企画に外れなし

 

「ジュースさ炭酸よりフルーツジュースが好きなんだけどさ」

バヤリースとかなっちゃんとかあるじゃん」

「あれの区別とかはつかないのよ」

「毎回なんか適当に買うのよ」

「あ、何階ですか?四階っすね、や大丈夫っすよ」

「区別つきます?フルーツジュースの」

「あ、今度利きフルーツジュースしましょうよ!」

「オレンジ味が特に難しいんじゃないかって踏んでますよ僕はね」

「どうですか?」

 

「いやどうて」

「今日一発目からすげー喋ったな」

「あとごめん新発見あったんだけど俺らいつもエレベーターでしゃべってんの?」

 

「今日だけです」

 

「なんで今日だけ?」

「あとエレベーター内でする会話の量じゃないよ君のさっきのやつ」

 

「特に意味はないです」

「せっかくフィクションならこういう設定もアリかなって」

 

「なんも意味ない設定なんてないんだよほんとは」

「設定なんだからなにか意味を……っとすみません……」

 

「すみませ~ん」

 

「……。」

「もう四階だった」

 

「うん」

 

「いやむしろテンポ悪くなってる!」

「なんでわざわざエレベーターでしなきゃならないんだ会話を!」

 

「まぁまぁ落ち着いて」

 

「しかもこれどっか向かってるとかじゃないんだよね」

 

「うん、ただ乗ってる」

 

「エレベーターをゴールにする人なんていないんだよ……」

「フルーツジュースの話も弱いし」

「あと分かんないけど多分利きジュースで難しいのはグレープだよ!」

 

「……。」

 

「なんか言いなよ」

 

「……。」

 

「そんなへこむことないでしょ」

「なんか言いなって!」

「おいって!」

 

あ、すみません降りまーす

 

「あ、すみませんどうぞ……」

「……まだ人いたんかーい」

 

チーン

「着いたよ」

 

「やっと着いたよ……やっと解放される」

 

「よしじゃあ次は降りようか」

 

「もういいよ、やめさせてもらうわ」