もう明日っていうか今日じゃねーか!
俺の世界は狭い。
毎日、自宅と会社を行ったり来たり。休日もどこに行くわけじゃない。
俺の世界は自宅と会社をつなぐ通勤路のみで構成されている。
だから、政治家の不正だの、海の向こうで争いがあるだの、まったくよく分からない。
世界の外のことは分からない。俺には翼がないから飛ぼうと思ったことが無い。それと同じ。世界の外なんて無いのと同じ。
別に開き直ってるわけじゃない。自分のことは好きじゃないし、むしろ嫌いだ。
駅のホーム。
世界一寒い場所は駅のホームだ。俺の狭い世界での話だけど。
だから駅のホーム、嫌いなんだけど、嫌いな自分が辛い思いをしているのがすこし好きだったりする。
明らかに屈折しているのだが、なんだか自分が幸せだと申し訳なくなってしまう。でも、その自分の卑屈なところだけは自分で好きだ。だから、もうどうしようもないんだろう。
けたたましい電車の発車のベルが鳴る。うるさい。耳をふさぐと目がよく見える。そしたら猛吹雪がより強くなったように感じた。うーん、ほんとに強くなったのかも。
ホームのベンチは冷たい。ベンチは何枚かの板を釘かなんかでつなぎとめたつくりになっているので、尻のしたに直接冷たい風が当たる。寒いのでたまに立つ。疲れるから座る。寒くなって立つ。あぁ今度は疲れてきた。
「大丈夫ですか?」
「えっ。」
えっ。人に話しかけられた。こわ。え。
「あっ、大丈夫ですよ、はい、すいません」
そそくさとベンチから離れる。恥ずかしい。なんだよ。なんだよ急に。駅のホームは一人で考え事をする場所に決まってるだろ。なんだマジあいつ。
「わっ!」
わ!肩をつかまれた!こわ!声出ちゃった!
「ふふふ、野木島君だよね?」
……。…え?……わぁお。
「あーーー。日比谷か。日比谷だ!」
二回言っちゃった。高校の同級生だ。でも高校一年の時にしか一緒になってないからあんまり覚えてないけど。
ホントに俺の世界って狭いな。
「そうだよー!えー久しぶりだね」
「卒業ぶり?じゃないな、同窓会に来てた、よな?」
「うん。だから8…いや6年ぶり?とか?」
「は~、そんなぶりか~」
もう成人式から六年も経つのかよ。いやそりゃあ二十六ですから、そうか…。
「地元、帰ってきてたんだね」
「うん、地元で就職したんだ。日比谷も地元なんだな」
「うん。私はね。」
「そっか。」
……。やべぇ話すことねぇ。よし、帰ろう。はやく電車来い!
「野木島君、今日はもう帰り?」
「うん、寒いからはやく家着きたいわー」
「ふーん。はやく帰りたいんだー。」
「寒いからねぇ!」
俺、はやく、帰る。
ここで、電車のアナウンスが流れる。
「豪雪の影響で電車運行停止しております。皆様お待たせして申し訳ございません。」
「ふふふ、野木島君、どっか中に入ろうか」
まぁねー。
俺たちは駅ナカのカフェで休憩をとることにした。
この時の俺はまだ知らなかった…。
日比谷が国際指名手配されている極悪人だということに…!
☆そして明日のテストの現実逃避のためにブログを書いていることに…!