あどけなさよ、残れ

うどんはコシが大事

 

「正しい走り方知ってますか?」

 

「なんですか、正しい走り方?」

「走り方に正しいとかあるんですか」

 

「こう、良い走り方というか」

「あるんですよ」

 

「教えてくださいよ」

「教えられるもんならね!」

 

「喧嘩腰やめてね」

「姿勢として、腰とか重心を上下横にブレさせないで水平移動させるといいんですって」

 

「喧嘩腰すみません」

「へー腰を水平に保つと」

 

「いや全然いいよ」

「そうなんだよ」

「ガムシャラに走ると腰がブレがちなんだけど良くないみたいよ」

 

「あのほんと喧嘩腰すいませんした!」

「そうなんすね、腰が安定することが大事なんすね」

 

「うん、ちょっともう喧嘩腰の話するのやめてくれる?」

「ごちゃつくから」

 

「なんでですか?」

 

「いやそっちもわざと言ってるじゃんか」

「腰かぶせしてるじゃんか」

 

「あちゃー!」

「ほんとだ!やっちゃってましたね俺!」

 

「うん、もう許す許さないとかって次元にないからそういう芝居いらないから」

「もうほんとただただ『やめて』っていう話」

 

「え……」

「全然そんなつもりないですけど……」

 

「ねぇもういいから走り方の話しない?」

 

「いいですよ」

 

「よっしゃ解放された」

「でね、俺今日ちょっと急がなきゃいけないタイミングがあったから水平移動を試してみたのよ」

 

「おう、どうでした」

 

「全然わからないです」

 

「は?」

 

「スーツだったし」

「別にダッシュってわけじゃないし」

 

「なんの成果もなし?」

 

「いや一つ分かったのはね」

「走ってる時、姿勢がよくなるよ」

「ピンって」

 

「たしかになりそう」

「えぇでも速く走れるのかなぁ」

 

「ね、俺もまだ半信半疑だわ」

「あ、じゃあさ!今度部活の時にで」

 

「傘ってなんで進化しないんですかね」

 

「急になぁーんですか」

「急になぁーに」

 

「え」

 

「話の腰を折らないでよ」

 

「なるほど」

「少なくともトークの腰は水平移動が良いってか」

 

「オチてるかなぁ、結構微妙ですよ」