不思議なことに人間は辛くても、楽しくても、眠れない。

劇場型人間

 

「悩み……みたいなもんなんだけどさ」

「なんか根が劇っぽいわ。俺」

 

「なんですか?」

 

「劇っぽいのよ」

 

「ゲキ?何、演劇とかの劇?」

 

「そう」

 

「どうして?」

 

「いやさ今日プレゼンみたいなのする機会があってさ」

 

「え?そんな機会ある?」

 

「いやw就活でさ」

 

「あぁ」

 

「グループでやるやつなんだけどさ」

「発表俺がすることになってさ」

 

「そういうのやってんのねぇ」

 

「やってんのよw」

「でさ、みんなの前で話すんだけどさ」

 

「うん」

 

「こう……なんつーんだろう。劇っぽくなっちゃうんだよ。」

 

「劇っぽいって何なの?」

 

「説明しにくいのよ」

 

「あ、オペラみたいになっちゃうみたいな?」

 

「それはもう『ぽい』じゃ済まされないでしょ。」

「感情的というか、身振り手振り多めになったり、語りかける感じとかするのよ」

 

「えぇ?それって……」

「なんか恥ずかしいな」

 

「そうなのよ!!」

「もう恥ずかしくてしょうがないよおりゃあ……」

 

「やめりゃあいいじゃん、とは……?」

 

「なる……けどやめられないんだろうな」

 

「根が劇ですもんね。根ですもんね」

 

「ねー。いったいさ……!どうしたらいいんだろうね!」

「この僕をさぁ!」

 

「はい?僕?」

 

「僕だって嫌だよ!」

「でも……愛するしかないじゃんか……!しょうがないじゃないか!」

 

「根じゃないじゃん。もう花じゃん」

「咲いてんじゃん。」

「満開で」

 

「出ちゃってた?」

 

「うん」

 

「あらぁ。……まいったね。」

 

「勝手に落ちてろ」

 

「そんな殺生な!」